Mother and Child

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              二十代の頃は
自分の世界観を最も中心に過ごしていた様に思う。
結婚願望などは全く無く
「6月の花嫁」になる事や花嫁衣装を夢見ることも無かったので
当然、子供が居る家庭を持つ事などには全く興味が無く
想像すらした事も無かった。
そんな頃のある日電車に乗っていたら
向かい側の座席に質素な身形の若い母親2人と
          小さな子供達が座って来た。

      私の耳に入ってきたその時の2人の母親の会話が
現在でもとても心に残っている。

「楽しかったネ〜。子供達が凄く喜んでいるのを見て連れて来て心底よかったと思った」
「ほんとだよね〜。この子達の喜んでいるのを見るのすっごく幸せ!」
「私なんて学歴なんてないからさあ〜、教えてあげれる事なんて無いから⋯
せめて、いろんなところへ連れていって沢山の物を見せて経験をさせてあげたいなって思ってる
       そんな事ならしてあげられるんだよね」
       と言う様な会話だった事を今でも鮮明に覚えている


          2人の若い母親は
 その時の私とは全く異なる人生を送っているに違いない女性達だった。
     この様な会話は母親として普通の事なのかもしれないけれど、
私はこの2人の会話に耳を傾け感動した。
若い母親の幼児虐待は
その頃も日本の社会的問題に取り上げられていたけれど、
この若いお母さん達と子供達の将来は明るい⋯そう思った。
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家庭の主婦になり
        子供の親になる事を想像した事もなかった私は
           その後、夫と出逢い結婚をして
想定外の人生を歩み始めて間もない頃
親しくしていた当時の赴任地の市長夫人からお誘いがあり、
孤児院を夫人と2人で訪問した事があった。
親見捨てられ、又は親の虐待で保護された子供達がそこには沢山いた。
褐色の肌にまん丸で綺麗な瞳を持った
    1歳ちょっとくらいの小さな男の子を抱いた院長さんが
            私に近づいて来た。
         その子はニコニコとしてとても可愛く、
        我が家の長男と丁度同じくらいの歳だった
           
 私に抱かれたいと両手を差し出し
          体を乗り出して来たので
    抱いてみたら我が子よりもとても軽くて驚いた。

「この子のお母さんや家族は?」と尋ねると
母親は若く10代から子供を産んでいるそうでこの子は何人目かの子供だが
精神が不安定で子供を1人殺害したので母親は刑務所内の施設に入れられているそう。
実は此処には書けない悲惨な事が母子の間にあったことを聞いて
我が子と同じ歳の子供ゆえに私のショックは更に大きく、
悲しくて悲しくて涙が止まらなくなり、
その場で泣いてしまった事がある。
**
知人のアメリカ人女性には一歳上の兄がいる。
ある日、母親と兄と3人で地元の大型スーパに買い物に行った際に
以前近所に住んでいた母親の旧知の女性に偶然会ったのだそう
その女性は
         彼女とお兄さんを見て彼女の母親に
「どちらの子が養子だった?」と無神経に尋ねられたそう
その時の母親は
「随分前のことだから忘れたわ」と顔色ひとつ変えずに冷静に答えた
それまで彼女は兄上とは血の繋がりがないことを知らずに育った訳で、
心無い人によって子供達の心は傷ついたに違いないが、
       母親は何もなかったかの様にいつもの通りに
          子供達に愛情を注いだそうで、
      知人の女性は分け隔て無く育ててくれた母親を
尊敬していると語っていた。
私が同じ立場であったら一体どんな言葉を返しただろう?
堂々とした態度で愚問を交わす事ができただろうか?

            母親になって以来
子供を護る本能」が強く芽生えたことに気づいた事がある
この女性の母親も表面には出さずとも子供達を護る事に精一杯で
咄嗟に口にした返事だったに違いないのだろう。

子供の人生は家族や環境で左右される。
        家庭が裕福か又はそうで無いかよりも
     親の精神的なエゴが子供の将来に影響する事も多い。
或いは防ぐ事のできない戦争であったり⋯

別の知人のマダムは
ウクライナから避難して来た母子に自宅の部屋を提供している。
自国を離れ、言葉の違う国で戦場に残る夫の安否を気遣い
       子育てする不安は想像を絶するものがある
  そんな母子を精神的にも支え、接してあげる事は
           受け入れる側も
   強い精神と愛情が無くてはとても出来ない事だ

気温が上がり天気の良い日にその子は屋外でサッカーをしたそう
何ヶ月ぶりかで屋外で走り回ることができてその子の笑顔が眩しく
喜ぶ息子の笑顔にウクライナ人の母親も
        久しぶりに笑みを浮かべたと聞いて
私の眼頭は又熱くなった。

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by Diary-17 | 2022-05-08 07:00 | 呟き

日々の覚え書き衣食住


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